御聖誕八百年を迎う ―『産湯相承事』から
住職 榎木境道  御聖誕八百年の記念すべき時を迎えています。 日蓮大聖人が御自身の出生などに関する内容を、唯授一人ゆいじゅいちにんの弟子である日興上人へ話されたのを、日興上人が筆録された『産湯相承事うぶゆそうじょうのこと』(御書1708㌻)という書き物があります。大聖人に最もお側で、しかも長い間仕...
熊本地震に想う
住職 榎木境道  東日本大地震から僅か5年、去る4月14日の前震・同16日の本震を中心に発生した熊本地震は、熊本県・大分県方面に多大な被害をもたらした。余震もすでに1000回を優に越え、回数は次第に減ってきているものの、被災者が本当に心休まる日はいつのことか。  近い将来、襲って来るであろうとされる東南海...
鴦掘摩羅(おうくつまら)と鬼子母神(きしもじん)の話
住職 榎木境道  少年たちのいじめから来る暴行・殺人や少年少女の誘拐事件、ひいては親子の関係にも痛ましい現実が及んでいます。  現在のような世相に遭遇してみると、仏典にある説話の中身が改めて思い起こされます。そこには人間個々に潜む心の暗闇が様々に描かれているのですが、御書に「鴦掘摩羅(おうくつま...
家の宗教と個人の信仰
住職 榎木境道  日本の家庭には、昔と比べて仏壇がある家が少なくなっています。正確な統計が出ているわけではありませんが、核家族化が進み、アパートやマンション・公団が増えるに連れ、一軒の家の間取りも狭められてきているということが当然考えられます。こういう状況からすれば、核家族化によって所帯数は増加...
現代の他国侵逼難と自界叛逆難
住職 榎木境道  今を去る七五四年前の文応元(一二六〇)年七月十六日、日蓮大聖人は幕府の要人・宿屋左衛門入道を通じて、政治の最高権力者であった最明寺入道北条時頼に『立正安国論』を奏呈して、国家諫暁をされました。  『安国論』には、もしも日本国に、念仏等の誤った教えがこのままはびこったままであるな...
未来に伝えられる大石寺御影堂 – その歴史を探る
住職 榎木境道  立正安国論正義顕揚七五〇年の記念事業として、大改修工事が行われてきた総本山大石寺御影堂が、恙なく昨年末に竣工し、四六会にも及ぶ慶祝記念法要が奉修されたのも、まだ記憶に新しいところです。  御影堂は身延を離山された日興上人が、大石寺を開創された時に、御内仏様を御安置した六壷が建て...
新年のお祝いあれこれ
住職 榎木境道  新年明けましておめでとうございます。 年齢と同じ数の新年を迎えても雑煮(ぞうに)やおせち料理が食前を飾り、お年玉が行き交う様子は感慨深いものがあります。とは言え、近年お節料理の中身はといえば、かなり変化も見られるようになりましたが……。  お節料理の起源を探ると、ハレ(非日常の...
紫宸殿と申状
住職 榎木境道  日蓮正宗の年間一大行事である、御会式の季節を迎えています。御会式は宗祖日蓮大聖人の御命日を期して奉修されますが、意義においては、日蓮大聖人が法華経寿量品に説かれる末法の仏様として三世常住される、その御境界をお祝いする儀式です。本宗の御会式には『立正安国論』の奉読とともに、歴代上...
真の幸福を築くために
住職 榎木境道  東日本大震災以降、人々の幸福感も変わってきたと言われています。と言うより、どのようなことをもって幸福と言えるのか、そのあたりの明確な目標なり指標のようなものが、失われてしまったのが現在の世の中ではないでしょうか。  かつては曲がりなりにも社会人として就業して、その中で家庭を築き...
日蓮大聖人と立正安国論の周辺
住職 榎木境道  『立正安国論』は日蓮大聖人が国家諫暁の書として著された、代表的な著述であることは広く知られています。四六駢儷体(しろくべんれいたい)という漢文の一手法が用いられ、対句により音読すると流麗な響きがあります。  文応元年七月一六日、大聖人はこの書を幕府に奏進して、唯一の正法である法...
桜と山吹と白蓮華
住職 榎木境道  花の季節がめぐってきました。自然界の営みに心から感謝をしたい昨今です。  桜の美しさは素直に愛でたいものですが、しかし散り際の鮮やかさには、一層のおもむきが感じられます。散る花びらは、古代人がいた頃から、我々に様々な訴えをしてきたようです。無常観はもとよりですが、日蓮大聖人の御...